東京地方裁判所 昭和49年(特わ)246号 判決 1974年7月31日
被告人
国籍
韓国
住居
東京都文京区湯島四丁目四番二〇号
喫茶店等経営
三浦義雄こと
金成泰
一九二二年一〇月一日生
出席検察官
田中豊
出席弁護人
堀合辰夫
主文
1. 被告人を懲役八月および罰金一、二〇〇万円に処する。
2. 被告人において右罰金を支払えないときは金五万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。
3. 本裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
4. 訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は東京都千代田区神田駿河台二丁目一番地において喫茶店「丘」および甘味喫茶店「嵯峨野」を、東京都台東区上野四丁目三番八号においてパチンコ店「世界」を経営しており、昭和四六年二月までは同所でバー「夜の蝶」をも経営していたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外して仮名預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
第一、昭和四五年分の実際所得金額が別紙第一記載のとおり三、四三八万三、九三五円あつたにもかかわらず、昭和四六年三月一五日東京都千代田区神田錦町三丁目三番地所在の所轄神田税務署において同税務署長に対し、その所得金額が一、三〇一万八、二七四円であり、これに対する所得税額が五一〇万七、五〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年分の正規の所得税額一、七五九万七、四〇〇円と右申告税額との差額一、二四八万九、九〇〇円を免れ、
第二、昭和四六年分の実際所得金額が別紙第二記載のとおり四、二五三万五、八二四円あつたにもかかわらず、昭和四七年三月一五日所轄の前記神田税務署において同税務署長に対し、その所得金額が一、二六九万七、九四一円であり、これに対する所得税額が四五二万四、一〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年分の正規の所得税額二、二一三万二、六〇〇円と右申告税額との差額一、七六〇万八、五〇〇円を免れ、
第三、昭和四七年分の実際所得金額が別紙第三記載のとおり四、七二四万一、四六四円あつたにもかかわらず、昭和四八年三月一五日所轄の前記神田税務署において同税務署長に対し、その所得金額が一、五三九万七、〇四〇円であり、これに対する所得税額が五九〇万三、八〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年分の正規の所得税額二、五〇八万五、三〇〇円と右申告税額との差額一、九一八万一、五〇〇円を免れたもの(税額の算定経過は別紙第四記載のとおり)である。
(証拠の標目)
一、被告人の検察官に対する供述調書二通
一、被告人に対する大蔵事務官の質問てん末書六通
一、証人宮崎三郎の当公判廷における供述
一、押収してある所得税確定申告書昭和四五年分、昭和四六年分、昭和四七年分(昭和四九年押第七〇五号の二〇、二一、二二)
一、次の者の検察官に対する各供述調書
金徳行、宮崎三郎、中北冨美子
一、次の者に対する大蔵事務官の質問てん末書
川又忠二(二通)、荒川鎮(二通)、塚田隆昭(二通)、川崎裕子(三通)、宮崎三郎(二通)、中北冨美子(二通)、金徳行(三通)、金鎮煥、金京洙、康昌泳、金散律、岡田ぜん(二通)
一、次の者の作成の各上申書
金徳行、川崎裕子(二通)、宮崎三郎
一、次の金融機関作成の各取引照会回答書(証明書)
朝日信用金庫上野支店(三通)、住友銀行神田支店、朝日信用金庫本店、協和信用金庫浅草支店
一、原沢一雄作成の「三浦義雄氏からの借入金について)」と題する書面
一、次の者の作成の各書面
文京都税事務所長、文京区長、神田税務署長(二通)、小石川電話局長、東京瓦斯浅草営業所長、東京電力大塚支店料金課長、東京都水道局神楽河岸営業所長、日本電信電話公社神田営業所長
一、被告人作成の「生活費の明細について」と題する書面
一、大蔵事務官米長日出男作成の調査書四通
一、押収してある次の各証拠物(いずれも前同押号でかつこ内は押収符号)
金銭出納帳六冊(一、二、三)、青色申告者書類綴(四)、四五年分所得税申告書決算書控一袋(五)、四六年分所得税申告書決算書控一袋(六)、四四年分決算メモ等一袋(七)、土地建物売買契約書等二袋(八)、売買契約書等二袋(九)、土地売買契約書等一袋(一〇)、登記済権利証三袋(一一)、四七年分決算メモ等一袋(一二)、元帳三綴(一三、一五、一六)、仕入帳一綴(一四)、給与計算書一綴(一七)、約束手形控二冊(一八、一九)、売上メモ帳三綴(二三、二四、二五)、四六年分決算メモ等一袋(二六)、四七年分所得税確定申告書決算書控一袋(二七)、当座照合表等一袋(二八)、四五年分試算表一袋(二九)、四七年分決算メモ等一袋(三〇)
(法令の適用)
一、該当罰条 所得税法二三八条(懲役刑と罰金刑を併科)
一、併合加重 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(懲役刑につき犯情最重の判示第三の罪の刑に法定加重)、刑法四五条前段、四八条二項(罰金刑につき)
一、労役場留置 刑法一八条
一、執行猶予 懲役刑につき刑法二五条一項
一、訴訟費用の負担 刑事訴訟法一八一条一項本文
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 池田真一)
別紙第一
修正貸借対照表
昭和45年12月31
<省略>
別紙第二
修正貸借対照表
昭和46年12月31日
<省略>
別紙第三
修正貸借対照表
昭和47年12月31日
<省略>
別紙第四
課税総所得金額および逋脱税額計算書
<省略>
注1 33,937,000×61.2%=20,769,444
20,769,400-3,172,000=17,597,400
注2 42,031,000×65%=27,320,150
27,320,100-5,187,500=22,132,600
注3 46,722,000×65%=30,369,300
30,369,300-5,284,000=25,085,300